ミャンマーの人たちが、自分たちの手で生活環境の課題を解決し、命を育む未来を描ける社会。 この実現がミャンマー ファミリー・クリニックと菜園の会(MFCG)が目指すもの。 そのために、 (1)巡回診療(移動クリニック)、 この3つをつなげて1つの輪にすることが私たちのミッションです。 |
民主化の流れとともに、ミャンマーは今や経済成長が見込まれる 「アジア最後のフロンティア」として世界から注目を浴びる国となりました。
しかし、依然として人口5300万人余りのうちおよそ70%の人が農村部に住み、なかには十分な食べ物がなく、医療も保健衛生の知識を得る機会もほとんどない人がいます。
そのためマラリアや栄養不良になりやすく、1000人の子どものうち52人が5歳までに命を落としています(日本の約17倍)。
もちろん病院に行かれればいいのですが、近くに診療所がなく、3日かけて町の病院に行く人も少なくありません。
季節ごとに農地を回って農作業の手伝いをして生計を立てている彼らの日当はおよそ200円。病院へ行く交通費はその3倍かかります。
また、薬代を支払うのも厳しいのが現状です。
マラリアの場合、子どもなら1回150円の薬で治りますが、彼らの日当に匹敵します。
さらに悲しいのは、仮に薬や栄養剤で治療をしても、生活習慣が変わらないため数週間もすれば再び体調を崩してしまうことです。
この負の連鎖を断ち切り、ミャンマーの人たちが明るく
健康的な生活を送るために、MFCGでは、
(1)巡回診療(移動クリニック)
(2)保健衛生指導
(3)家庭菜園支援
の実現を目指しています。
活動拠点はヤンゴンの西、デルタ地域のミャウンミャです。
現在、MFCG代表の医師名知仁子と現地の医師が、12の村を回って診察をしています。
MFCG が住民の皆さんと共に活動を行うためには、彼らとより良い交友関係を築くことが大切です。
そのため、住民と定例ミーティングを行い、MFCGの活動が現地目線となるよう、現地のニーズに合っているかを調査し、住民たちと一緒に次はどんなステップを踏めばいいのかを考える機会を設けています。
こうしたことが現地での医療活動を進展させることにつながっています。
私たち日本人には当たり前の保健衛生ですが、住民の方たちはその知識が十分ではありません。
なぜなら彼らには知る機会がないからです。
そこで石けんを使った手の洗い方や食物の栄養バランスの大切さをみんなで勉強しています。
例えば、脚気(ビタミンB1欠乏症)を予防するために、お米を頻回に洗わず数回だけにして、そのとぎ汁を飲むことを住民に推奨しています。
また、軒先に置いてある水瓶はボウフラのかっこうの住み処になっているので、水瓶に蓋をするよう指導しています。これでマラリアの原因となる蚊の発生を抑制できるのです。
栄養不良の原因には大きく2つあります。ひとつは、村に十分な食べ物がないこと。
もうひとつは、バランスの悪い食生活です。
住民の食事は、基本的にお米だけです。野菜や魚などは家の近くでは手に入りにくく、買おうとしても高価です。
そのため、せっかく治療をしても再び栄養不良となり病で倒れてしまいます。
しかし、住民の皆さんが自宅で野菜を栽培し、それを食べれば栄養不良を避けることができます。
そこで、2015年の夏、MFCGでは農業の専門家を村に呼び、住民への無農薬栽培の指導を始めました。
住民が費用をかけずに継続できるよう、虫除けはターメリックや米の籾殻など身近にあるものを利用して作った木酢酸です。
この結果、ナスやトマトが実り、栄養バランスが向上しただけではなく、ほとんど収入がなかった女性が自作の作物を売ることで毎日300円~400円の収入を得、更には毎月約3000円の貯金ができるようになりました。
ミャンマーでは、低収入・重労働というイメージから農家は敬遠されているのが実情です。
しかし、食は人間の生命の根源であり、この重要な役割を果たしているのが農家。
こうした女性の実績が他の住民にとってのモデルとなり、農家の社会的立場を押し上げ、ひいては地域全体の健康状態の改善・自立的生活に繋がると私たちは信じています。